小学生のうちに、塾と習い事の両方に通わせている家庭は今や少なくありません。
ピアノやスイミング、野球やサッカー、習字や英会話など、子どもの成長に多様な経験を与えたいと考える一方で、学力を維持・向上させるために塾通いも検討しているご家庭は多いはずです。
ですが、子どもの体力や家庭のスケジュール、金銭的負担などを考えると、「やっていけるのだろうか」「無理をさせすぎないだろうか」と不安になることもあります。
ここでは、小学生が塾と習い事を両立する際の現実と、そのメリット・デメリット、家庭でできる工夫について詳しく解説します。
両立している家庭は多数。だが、やり方にコツがある
現在、多くの家庭で「塾+習い事」の形を採っています。以下はよくある組み合わせの一例です。
- 塾(週2)+ピアノ(週1)
- 塾(週2)+スイミング(週1〜2)
- 塾(週2〜3)+野球やサッカー(週末中心)
- 塾(週2)+英会話(週1)
これらの組み合わせは、学習と非学習系のバランスを取りやすく、家庭でも取り入れやすい構成です。
実際に通っている子どもたちは、「月・水が塾、火がピアノ、土日はクラブ活動」という具合に、習慣として定着しているケースが多く見られます。
ただし、すべての子どもが無理なくこなせるとは限りません。
塾と習い事の両立には、明確なメリットと同時に注意すべきデメリットもあるのです。
塾と習い事を両立するメリット
学力と非認知能力のバランスが取れる
塾では知識や論理的思考力が育ち、習い事では集中力・持久力・創造性・協調性といった非認知能力が育ちます。
両方を取り入れることで、子どもの総合的な成長が期待できます。
気分転換になる
学習ばかりになりがちな日常に、好きな習い事があることで、子どもがリフレッシュできます。
精神的な安定やストレスの発散にもつながり、結果として学習意欲が維持しやすくなります。
自分の時間管理感覚が育つ
スケジュールが詰まっていると、「この時間までに宿題を終わらせよう」「今日は早めに寝よう」といった時間意識や計画性が自然と身につきます。
これは中高生以降の生活にも生きる力になります。
将来の進路選択に広がりが出る
習い事で得た特技が、将来的な自己肯定感や得意分野につながることもあります。
学力だけでは測れない「自分らしさ」の土台になる可能性もあるのです。
塾と習い事を両立するデメリット・注意点
子どもが疲れすぎてしまう
週4〜5日が放課後に埋まってしまうと、心身の疲れが蓄積します。
とくに低学年のうちは体力面で無理がきかないため、「行きたくない」「集中できない」といった状態になることも。
家庭学習の時間が取りづらくなる
塾と習い事で帰宅が遅くなると、家庭学習の時間が限られます。
塾の宿題をこなすだけで精一杯になってしまい、自主学習や復習の時間が減る可能性も。
送迎や費用面での負担が大きくなる
親の立場では時間的・経済的負担も無視できません。
特に複数の子どもを抱えている家庭では、送迎時間の調整や月謝・交通費の捻出に悩むことも多くなります。
子どもが「義務感」で続けてしまう
本当はどちらかをやめたいのに、親に遠慮して続けているケースもあります。
「好きだった習い事が、気づけば義務になっていた」という声も少なくありません。
両立を成功させるためのポイント
目的を明確にする
塾にも習い事にも、それぞれ異なる「通わせる目的」があるはずです。
例えば、「塾では学習習慣を身につけさせたい」「ピアノは集中力と継続力を育てたい」など、家庭の教育方針に基づいた理由をしっかり持つことが大切です。
目的が明確になることで、習い事が増えすぎたときや、時間に追われる生活に直面したときに、優先順位を判断しやすくなります。
また、子ども自身にもその目的を共有しておくと、納得感を持って取り組みやすくなります。
「なぜやっているのか」が本人の中で理解できているかどうかが、両立の鍵を握ります。
優先順位を決める
両立を成立させるうえで欠かせないのが、習い事・塾・家庭学習・休息の中で何を最優先にするかを家庭で明確にしておくことです。
たとえば、「中学受験を見据えて高学年からは塾を優先する」「発表会や大会の前は習い事に集中する」など、年間スケジュール単位での柔軟な運用が有効です。
重要なのは、「全部同時に完璧にこなそうとしない」こと。
優先順位が明確であれば、どちらかを一時的に減らすことも「失敗」ではなく、「判断」として前向きに捉えることができます。
習い事を曜日で選ぶ・通いやすさを重視する
スケジュールの重なりを避けるためには、習い事や塾を選ぶ際に曜日や時間帯の調整が可能かどうかを事前に確認することが重要です。
最近では、同じ習い事でも曜日選択ができる教室や、振替制度を設けているところもあります。
また、移動距離や送迎時間の長さも大きな負担になります。
習い事と塾が近い、学校や自宅からの動線がスムーズなど、立地や通いやすさを重視することも両立の成功率を高めるポイントです。
時間の「見える化」とスケジュール管理
習い事と塾のスケジュールを、家族全員が把握できるように共有する仕組みを作りましょう。
カレンダーやホワイトボード、スケジュールアプリなどを活用することで、ダブルブッキングや忘れ物の防止にもつながります。
時間が見えることで、子ども自身も「今日は何があるのか」「いつ宿題をするべきか」を意識するようになり、時間管理能力の育成にもなります。
子どもと定期的に振り返りを行う
定期的に「今の生活に無理はないか」「どちらかがストレスになっていないか」を親子で話し合う時間を設けることが、両立継続の秘訣です。
子どもの表情や行動に少しでも異変が見られたら、「辞めてもいいんだよ」「続け方を変えようか」といった声かけで、柔軟に対応する姿勢を見せましょう。
一度決めた習い事や塾でも、時期や学年が変われば優先順位は変わります。
「合わなかったから辞める」「時期が過ぎたから塾に比重を移す」といった見直しを、前向きな選択肢として取り入れてください。
休む勇気も両立のひとつ
「続ける」ことだけが正解ではありません。どうしても疲れているときや、学校行事が重なっている週には、どちらかを休ませるという選択も大切です。
無理に続けた結果、体調を崩したり、学びに対してネガティブな印象を持ってしまっては本末転倒です。
休む日を「回復のための大切な日」として捉え、罪悪感なくスケジュールに組み込むことが、結果的に長く続けられる土台を作ります。
子どもが「楽しい」と思える環境を最優先に
習い事も塾も、子ども自身が「楽しい」「続けたい」と感じてこそ、効果が表れます。
嫌々通っている場合は、やる気も伸びしろも頭打ちになります。
教室の雰囲気、講師との相性、周囲との人間関係なども定期的にチェックし、「その子にとって最適な環境」かどうかを見直していくことが重要です。
両立の成否を分けるのは、時間やお金よりも子どもの気持ちです。学びも活動も、楽しんで取り組めることが、子どもをもっと大きく育ててくれます。
「全部やらせたい」ではなく、「必要なものを見極める」視点を
「せっかく始めたから続けさせたい」「あれもこれもやらせたい」と思う気持ちは当然です。
しかし、本当に必要なことは、子どもが無理なく、自分の成長を実感しながら続けられる環境を整えることです。
両立がうまくいくご家庭では、「今、何が優先か?」「子どもにとって負担になっていないか?」という視点を常に持ちながら、定期的に見直しをしています。
大切なのは「始めたことをすべて継続すること」ではなく、「今の子どもに合っているものを柔軟に選び直すこと」です。
両立のカギは「無理せず続ける仕組みづくり」
塾と習い事を両立することは、多くの家庭で実現可能です。
ただし、やみくもに予定を詰め込んでしまえば、子どもにとって大きな負担になってしまうことも。
大切なのは、通わせる目的を明確にし、家庭のリズムに合ったペースで両立させていくことです。
「今、何を優先すべきか」「子どもの体調や気持ちはどうか」といった視点を常に持ちながら、時には立ち止まって見直す柔軟さも必要です。
塾も習い事も、子どもが楽しく・前向きに取り組める環境でこそ、真の効果が発揮されます。
家庭ごとの最適なバランスを見つけ、子どもにとって豊かな学びの時間を支えていきましょう。